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Pharma PSE COP

設立背景

高齢化社会の進行に伴い、医薬品の重要性が増している。産業全体ではバイオ医薬品のシェア拡大や、個別化医療・再生医療の市場化が進み、製造では連続製造やシングルユース、ロボット化・スマート化など新技術の開発が進んでいる。アカデミアでも、化学工学、とりわけプロセスシステム工学の分野で医薬品製造に関する研究が活発化しており[1]、連続製造[2]やPAT[3]、スケジューリング[4]など多くの研究が進められている。プロセスシステム工学は「プロセスの総合的な最適化を実現するための基礎理論、手法、コンピュータ利用技術を研究する専門分野」である[5]。医薬品製造を対象とするプロセスシステム工学とその産業応用は今後ますます重要になると考えられる。
製薬プロセスシステム工学(Pharmaceutical Process Systems Engineering: Pharma PSE)は、品質や経済性、供給安定性、環境・安全面など、多目的に優れたプロセスを実現するための方法論研究であり、2013年から東京大学平尾・杉山研究室で取り組まれている[6, 7]。ISPE日本本部ではPharma PSEの実践に向け、2013年に無菌COP内にOPEX WGが設けられた。これを発展させる形で2015年4月に創設されたのがPharma PSE COPである。ISPEでの議論は、製品ロス低減[8, 9]やシングルユース・マルチユースの技術選択[10]のような成果に活かされてきた。

目的

本COPの目的は「Pharma PSE研究の最新成果を産業応用につなげること」である。「バックグラウンドの多様性」と「オープンイノベーション」をキーワードに活動する。

活動内容

2017年は以下の活動に取り組む。定例会は毎月第4木曜日10時~12時に実施する。

  • 「シングルユース・マルチユースの技術選択支援手法」をツール実装する:注射剤製造を対象とする技術選択支援手法[10]に基づくオリジナルのソフトウェアツールを作成する。実際にツールを動かしながら、プロセスの合成やモデル化、さらには意思決定支援に何が求められるのかを議論する。
  • 「モデルベースト設計」の役割を理解する:プロセスシステム工学の研究では多くの場合、プロセスの入出力関係やそれを経済性・環境影響などで評価するモデル(数式)が研究の中核をなす。モデルに基づくプロセス設計が、創薬研究から実生産まで、ひいては産業全体の中でどのような役割を果たせるのかについて考える。
  • 連続製造や再生医療をはじめとする最新の研究・技術動向を把握する:内外の研究者による発表・講演、関連研究機関や工場の見学を企画し、関連する情報に最新情報に常に触れられる環境をつくる。

Pharma PSE COPメンバーリスト

2022年10月現在

No. 役職 名前 会社名
1 リーダー 杉山 弘和 東京大学
2 事務局 山川 大介 日本ポール(株)
3 担当理事 藪亀 恭明 MSD(株)
4 メンバー 宇治 勝幸 千代田テクノエース(株)
5 田中 滋 日揮(株)
6 村上 譲司 横河電機(株)
7丸山 幸伸日揮(株)
8伊藤 規博千代田化工建設(株)
9岩井 優一エイワイファーマ(株)
10田口 智将千代田化工建設(株)
11大森 政也富田製薬(株)
12大石 琢悦(株)ケーテー製作所
13池田 義仁CMCシステム研究所
14宮地 崇之中外製薬工業(株)
15戸崎 和夫個人
16手綱 洋日医工岐阜工場(株)
17鈴木 博文バイエル薬品(株)
18長田 智之三菱ケミカルエンジニアリング(株)
19網谷 勇治三菱ケミカルエンジニアリング(株)
20伊藤 陽一郎(株)パウレック
21寺田 敬フロイント産業(株)
22寶田 哲仁東京理科大学
23松並 研作ゲント大学
24林 勇佑東京大学
25岡村 梢東京大学
26山田 真弘東京大学
27廣納 敬太東京大学
28金 俊佑東京大学
29市田 侑亮東京大学
30松枝 俊虎東京大学
31滋山 旭昇東京大学
32後藤 愛弓東京大学
33新正 真理東京大学
34根本 耕輔東京大学

ISPE内での発表・活動

2016年年次大会 Workshop5(2016年4月15日 タワーホール船堀)
「“Excellence by Design”の実現に向けた製薬プロセスシステム工学 Pharma PSE」

  • Pharma PSE COP設立経緯とワークショップの概要(山口 浩・ISPE日本本部)
  • 医薬品開発におけるプロセス設計の体系化-開発における基本設計の留意点-(池田 義仁・生化学工業(株))
  • プロセス改善の体系化に向けた取り組み(山口 剛司・ボッシュパッケージングテクノロジー(株))
  • シングルユース・マルチユース技術のプロセス選択肢としての比較評価(白畑 春来・東京大学)
  • 未使用医薬品の発生プロセス分析と低減支援手法(橋本 晶・東京大学)
  • Pharma PSE研究の今後とCOPとしての展開(杉山 弘和・東京大学)

2017年年次大会 Workshop8(2017年5月19日 富山国際会議場)
「医薬品製造におけるモデルベースト設計の役割」

  • 医薬品製造におけるモデルベースト設計の役割(杉山 弘和・東京大学)
  • モデル①無菌製剤製造におけるシングル・マルチユース技術の選択(白畑 春来・東京大学)
  • モデル②過酸化水素を用いた除染プロセスの設計(藪田 啓奨・東京大学)
  • モデル③固形製剤製造におけるバッチ・連続技術の選択(松並 研作・東京大学)
  • モデル④不確実性を考慮したCIP・SIPプロセスの改善(Casola Gioele・東京大学)
  • 産業から見たモデルベースト設計~製薬・装置・エンジニアリング・計装・サプライヤーの立場から~(北川 徹郎・中外製薬, 大石 琢悦・ケーテー製作所, 丸山幸伸・日揮, 村上 譲司・横河電機, 山川 大介・日本ポール)

参考文献

  1. G. V. Reklaitis, J. Khinast, F. J. Muzzio “Pharmaceutical engineering science-New approaches to pharmaceutical development and manufacturing” Chem. Eng. Sci., 65: iv-vii(2010)
  2. H. G. Jolliffe, D. I. Gerogiorgis “Plantwide design and economic evaluation of two Continuous Pharmaceutical Manufacturing(CPM)cases: ibuprofen and artemisinin” Comput. Chem. Eng., 91, 269-288(2016)
  3. R. Singh, A. D. Roman-Ospino, R. J. Romanach, M. Ierapetritou, R. Ramachandran “Real time monitoring of powder blend bulk density for coupled feed-forward/feed-back control of a continuous direct compaction tablet manufacturing process” Int. J. Pharmaceutics, 495, 612-625(2015)
  4. S. Moniz, A. P. Barbosa-Pova, J. P. de Sousa “Simultaneous regular and non-regular production scheduling of multipurpose batch plants: A real chemical-pharmaceutical case study” Comput. Chem. Eng., 67, 83-102(2014)
  5. 日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会ホームページ,
    https://www.jsps.go.jp/j-soc/list/143.html
  6. 杉山 弘和, 製薬プロセスシステム工学Pharma PSEの開拓, Pharm Tech Japan, 32, 57-62(2016)
  7. 東京大学 平尾・杉山研究室ホームページ,
    http://www.pse.t.u-tokyo.ac.jp/index.html
  8. Hirokazu Sugiyama, Masaaki Ito, Masahiko Hirao “Planning method for reducing product losses in manufacturing sterile drug products” J. Chem. Eng. Jpn., 48, 848-855(2015)
  9. K. Yabuta, M. Hirao, H. Sugiyama “Process model for enhancing yield in sterile drug product manufacturing” J. Pharm. Innov., in press(2017)
  10. H. Shirahata, M, Hirao, Hirokazu Sugiyama “Decision-support method for the choice between single-use and multi-use technologies in sterile drug product manufacturing” J. Pharm. Innov., 12, 1-13(2017)